人は自分で生きていこうと決めた時に学び始める。(フィンランドの教育研究『競争やめたら学力世界一』より)。それでは自らが果たすべき使命とは、どのように見つければいいのだろうか。『孟子』の尽心編より、その答えを探る。
『孟子』にこんな一節がある。
書き下し文。 「 孟子いわく、その心をつくすものは、その性を知るなり。その性を知れば、すなわち天を知る。その心を存し、その性を養うは、天に使うるゆえんなり。えんじゅうたがはず、身を修めてもってこれを待は、命を立つるゆえんなり、と。 」
(現代語訳)
孟子はおっしゃられた。「心をつくす人は、人の本性が善であると知ることになる。人間の本性を知れば、その本性を与えた天の心を知ることになる。おもいやりの心を失わないように努め(存心)、その心を養い育てていくことは、天の意志にかなっている。すなわち、天に使えていることと同義である。ところで人間には、寿命が短く若死にの人もあれば、長生きする人もある。しかしそのようなことに囚われず、ひたすら身を修めていれば(心をつくして人に接し、思いやりの心を失わないように努め、育ててゆけば)、天から与えられた使命を全うすることが出来る(立命)。
「自分がやるべきことが見つからない」という話をしばしば聞くことがある。しかし孟子によれば、思いやりの心で尽くすよう努めれば、自ずと天命に導かれ、使命を見出し、それを果たすことが出来るのである。
参考 内野熊一郎(1962)『孟子 新釈漢文大系4』明治書院 小林勝人訳注(1968)『孟子 上下』岩波文庫 金谷治(1966)『孟子』岩波新書
尽心編は特に修練存養に関する名言が多く、孟子の中でも一番印象に残るところ。岩波文庫では下巻に収録されている。